かんがえるにわとり

形になれば、いいなあ

ぞうけい

3DプリンタだFabLabだと言われはじめて久しくなってきたけど、日本で流行りだしたのはここ数年くらい?

かくいう僕も学部の卒業制作でDMM.makeを利用して3Dプリンタを体験してるし、学校に導入された3Dプリンタを無駄に活用してみたりしてる。進行形で幾つかモノも作ってるけど、そうしてる内に「3Dプリンタを使うことの"価値"ってなんじゃらほい」と考えることは別段不思議ではなかった。

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・・・というのも、造形というものは基本的に人の手によって作られる。それがフィギュアであれ、自動車であれ、必ず人の手が造形をするわけである。一体で作ることが難しかったり、多くの数を必要とするなら、分割設計し、金型を作り、レジンを流しこんだり金属プレスをすればいい。そうして必要な材を揃え、削ったり盛ったりして形は作られる。こんなこと正味数千年と変わってない。それこそ土偶や埴輪もやってることは一緒。

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ところが"3Dプリンタ"という機械はその観念をぶち壊しにしてしまった。

monoist.atmarkit.co.jp

このページで紹介されているギアは全て一体で造形されている。

これを造形している3Dプリンタは、一般的には「光造形方式」とか言われるものの内の「インクジェット型」で、造形物本体とは別に造形を補助するサポート材を使用するタイプが多い。造形後にサポート材を溶かすことで、可動部分まで十分に造形できる。ある意味では最も「プロダクト」ができる3Dプリンタ

・・・こうした複雑さに「一体」が加わると、手では造形ができなくなる。

「造形の精度がいい」とか、「簡単にできる」を3Dプリンタの価値として使うのも十分ではあるが、それ以上に何にも替えがたい答えをこのギアのオブジェが語っている。

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そう、3Dプリンタの最も大きな価値とは「手では造形できないモノを作る」ことにある。拙作"Voyd"はそのコンセプトに則って、僕ができる範囲での3D CAD力で作ったモノだったけど、意外にも反応はいい感じだった(学校のイベントとかで色々なところに持って行っては見てもらった反応からすれば、Voydのような造形はもっと増えていいし、あるいは商品として売りだされても良いはずなのだ...(注1))。

DMM.makeのクリエイターズマーケットを流し見してみても、石膏プリンタ(こいつは指定した色を造形時に着色できる。かなり便利)でフィギュアを作る以外は大体「CNCとかで切削できるなぁ」とか、「今までのフィギュアとあんま変わりないなー」みたいなそんな印象を持ちやすい。

3Dプリンタの妙を持って価値をつけるんであれば、「0.2mmの隙間を持ちつつベルトが上下に折り重なったリング(言葉で説明し辛い)」とか「関節一体成型フィギュア」のようなものは話題性も抜群で、ビルダーの腕の高さも宣伝できて一石二鳥だし、本当に欲しい人はお金を出す。文章書いてて思ったけどDMM.makeのクリエイターズマーケットって実は「プロダクトのキックスタート」としてはかなり良い場なのかも。設備もDMMが提供してくれるし。

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これはあくまで個人的な考えではあるんだけど、「ものづくり」ってのはどんどんミニマル...つまり「個人の範囲」になりつつある。MITがガラスの3Dプリンタを実現させ、金属の3Dプリンタも手が届きそうなところにやってきた。設備は小型・安価になって、コンピュータの性能も十分にある。これはつまり「誰もが気軽に製造業をできる」と言える。3D CADのテクニックは使う内に上がっていくし、造形のクオリティもそれなりにあがる。そうした段階で「アイデア」が大きな壁になってくる。

3Dプリンタによって加速した「ものづくり」は、「アイデア」という大きな壁で一度立ち止まる...というか今実際に停滞してるかな?って印象はある。これをぬけ出すには今一度「3Dプリンタだからできること」を考えてみるのも一興かなと。

フィラメントタイプ、光造形タイプ、粉末焼結タイプ、石膏タイプ・・・。色々な種類があるけど、どんな造形で臨めばそれぞれのメリットが最大限活かせる"面白い"造形が作れるのか、それが今後の「ものづくり」を面白くする一手だと個人的には考えてみたり。

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参考:3Dプリンタの基礎知識 | アビー

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(注1)基本的に光造形タイプで使われる素材というのは、紫外線で硬化するアクリル、レジンやプラスチックで、インクジェット型では更にサポート材に水溶性ワックスを使用する。これの材料はアメリカにおいては食器として利用できる程度の認可は受けてる(資料1(造形材)資料2(サポート材) PDF)。まぁナマの素材自体は素手で触るとかぶれたりするので造形後の話ではあるけど。しかしながらこれはアメリカに置ける認可なので、利用する素材が食器にも使えるかはきちんと確認しなければならない。食器利用可能なセラミック材を用いた3Dプリンタもあるので、用途に応じた機材の選択が求められる。